赤ちゃんの健康状態について
妊婦健診の目的には、生まれつきの疾患・症候群を評価することは含まれていません。もし、赤ちゃんの健康状態について知りたい場合には、出生前検査を考えます。
出生前検査には、エコー検査・血液検査・羊水検査など様々な方法があります。
クアトロテスト®︎
母体採血による検査です。4種類の血清マーカーを調べることで、ダウン症候群と18トリソミー、開放性神経管閉鎖不全の可能性を算出します。胎児にトリソミーや開放性神経管閉鎖不全を認める場合には、血清マーカーが下記のようなパターンになります。
※このテーブルは横にスクロール出来ます。
AFP | hCG | uE3 | Inhibin A | |
---|---|---|---|---|
ダウン症候群 | ↓ | ↑ | ↓ | ↑ |
18トリソミー | ↓ | ↓ | ↓ | |
開放性神経管閉鎖不全 | ↑ |
クアトロテストは、「年齢による一般頻度」をベースに、「4種類の血清マーカー」「人種」「体重」「妊娠週数」「家族歴」「インスリン依存性糖尿病の有無」の情報を掛け合わせて、可能性を計算します。
検査の結果は分数(1/●)で算出され、結果が基準値よりも高ければスクリーニング陽性、基準値よりも低ければスクリーニング陰性という解釈がつきます。
対象
ダウン症候群、18トリソミーのみに限定されます。13トリソミーは対象外です。
一方、形態異常である解放性神経管不全も対象になります。ただし、解放性神経管不全は、エコー検査で診断することが可能です。
精度
ダウン症候群についての精度(*感度)は、約80%です。
年齢が高いほど、もともとのトリソミーの可能性が高いため、クアトロテスト®︎の結果は高くでやすくなります。そのため、年齢が高い方ほど、この点に留意しておく必要があります。
実施時期と結果返却までの日数
妊娠15週0日から実施可能です。結果は約10日ほどわかります。
胎児ドック
胎児にトリソミーがある場合、下記のようなエコー所見を認めます。項目によっては、妊娠11〜13週にしかみられないものもあります。これらがあるかどうかを、胎児ドックでみることでトリソミーの可能性を調べます。評価する項目数は、多いほど精度(*感度)は上がります。
トリソミーの可能性は、分数(1/●)で算出されます。
※このテーブルは横にスクロール出来ます。
ダウン症候群 | 18トリソミー | 13トリソミー |
---|---|---|
NT肥厚(首のむくみ) その他・・・ など |
NT肥厚(首のむくみ) その他・・・ など |
NT肥厚(首のむくみ) その他・・・ など |
対象
ダウン症候群・18トリソミー・13トリソミーが対象に入ります。
胎児ドックは、トリソミーに加えて心臓病などの形態異常も加わります。クアトロテスト®︎の検査対象である、開放性神経管閉鎖不全については、「可能性」ではなく、「あるか、ないか」を評価することができます。
実施時期とトリソミーについての精度
胎児ドックでトリソミーを評価する場合、実施時期が重要になります。
妊娠11週0日〜13週6日が実施時期として最も適しており、ダウン症候群についての精度(*感度)は約80%です。これを過ぎると、精度は約50%に下がります。
結果返却までの日数
エコー検査であるため、結果は当日わかります。
NIPT(新型出生前検査、非侵襲的出生前遺伝学的検査)
NIPTは、胎盤由来のDNA断片(染色体が断片化したもの)の量を、妊婦さんの血液を使って調べます。結果は確率ではなく、トリソミーを対象としたNIPTでは、DNA断片量が2本分に相当すれば陰性、3本分に相当すれば陽性の判定となります。
精度
ダウン症候群についての精度(*感度)は、99%程度です。検査会社で若干異なりますので、注意が必要です。
結果返却までの日数
検査会社で解析を行うため、採血から1週間前後で結果が返却されます。
エコー検査(NT測定、FTS、胎児ドック、コンバインドテスト)とNIPTの違い
※このテーブルは横にスクロール出来ます。
ケアトロテスト | 胎児ドック | NIPT | |
---|---|---|---|
検査方法 | 血液検査 | エコー検査 | 血液検査 |
実施時期 | 妊娠15₋21週 | 妊娠11‐13週 ※当院では詳細な形態評価を行うため、妊娠12‐13週としています |
妊娠10週頃₋ |
結果返却にかかる時間 | 約10日 | 当日 | 1週間前後 |
対象疾患 | 21・18トリソミー+開放性神経管閉塞不全症 | 21・18・13トリソミー+形態異常 | 21・18・13トリソミー |
精度(感度) | 80%程度 | 妊娠11₋13週:80%程度 妊娠14週以降:50%程度 |
99%程度 |
結果の出方 | 確率 ※分数で算出されます |
確率 ※分数で算出されます |
陰性か陽性 |
出生前検査の選び方
ポイント1.全身の状態を知りたいか
生まれつきの疾患・症候群で多くの方が知っているものとして、ダウン症候群が挙がると思います。ダウン症候群は、染色体異常のなかで最も頻度が高い症候群ですが、生まれつきの疾患・症候群の約12%であり、ダウン症候群以外の疾患が多いことがわかります。
全体のなかで最も多い疾患は、心疾患であり、一般頻度が1%と言われます。
すべての疾患を知ることは難しいですが、頭・顔・首・胸・心臓・胃・腎臓・膀胱・手足など、すべての体のパーツで疾患があると考えてください。臓器の欠損(頭蓋骨がない、目がない、手足や指がない等)や心臓病などはイメージがつきやすいかもしれません。
生まれつきの疾患・症候群はたくさんありますが、ダウン症候群だけでなく、胎児の全身の健康状態について知りたい場合には、"胎児ドック"を受けることをおすすめします。
ポイント2.現在の妊娠週数
胎児ドックを受ける場合
妊娠11〜13週
胎児ドックの精度に不安が残る場合は、コンバインドテストまたはNIPTを加えます。
妊娠14週以降
胎児ドックの精度に不安が残る場合は、クアトロテスト®︎またはNIPTを加えます。
胎児ドックを受けない場合
NIPT、または妊娠15週以降はNIPTもクアトロテスト®︎を受けることも可能になります。
ポイント3.母体年齢
クアトロテスト®︎は、年齢によるトリソミーの一般頻度が特に影響する出生前検査です。そのため、高年妊娠の方は、スクリーニング陽性となりやすい検査であることに留意が必要です。