胎児クリニックが考えるNIPT

NIPTとは

検査対象(見つけられる症候群)

NIPTは、ダウン症候群(21トリソミー)・18トリソミー・13トリソミーという3つの染色体の数の変化を調べる検査です。全染色体数的異常(全ての染色体の数の変化)や微小欠失(細かな染色体異常)などを対象としている施設もありますが、日本医学会の認可施設では上記3つのトリソミーが対象となります。その理由は、この3つのトリソミー以外の染色体異常について、NIPTの検査精度がまだ確立されていないことがあります。全染色体をNIPTで調べた場合、「陽性」症例の半数異常は胎盤限局性モザイクであり、胎児は正常であると報告されています。

精度

NIPTはあくまで「可能性」がわかる検査です。精度は100%には至りません。

結果は「陰性(可能性が低い)」または「陽性(可能性が高い)」のどちらかで返ってきます。21・18・13トリソミーを対象とするNIPTの陰性的中率(陰性の信頼度)は99%以上とされます。一方で、陽性的中率(陽性の信頼度)は、年齢や赤ちゃんの様子(むくみ等のトリソミーの特徴があるか)によって、数%〜90%台とばらつきます。陽性=ダウン症候群がある、ということではなく、ダウン症候群があるのか、それとも本当はないのかを調べるには、「確定検査」といわれる検査(絨毛検査や羊水検査など)を行います。

NIPTの方法

妊婦さんの採血で検査を行います。

妊婦さんの血液中にある胎盤由来のDNA断片(染色体が断片化したもの)を調べます。胎盤と赤ちゃんの体は、一つの受精卵から分かれてできるため、基本的には同じ情報を持っていると考えます。ただし、胎盤と赤ちゃんの体で染色体の情報が異なることがあり、これを胎盤限局性モザイクといいます。胎盤限局性モザイクの場合には、NIPTで偽陽性となることがあります。このような理由により、精度が100%ではないことに注意が必要です。胎盤限局性モザイクである可能性は、どの染色体の数的異常がNIPTで陽性となったかによって大きく異なります。また、胎児をエコーで観察した時に異常所見があるかどうかによっても変わるため、一概に〇%とは言えません。

NIPTで陰性なら安心?

なにをもって安心できるかは人によって異なりますが、知りたい疾患を、納得できる精度で調べられているかが大切です。

検査対象(見つかりうるもの)

NIPT(Non-invasive prenatal test)は、新型出生前検査とも呼ばれる検査で、母体血を用いて3つのトリソミーを調べる検査です。赤ちゃんの生まれつきの病気や症候群はたくさんありますが、NIPTでは、21・18・13トリソミーを調べる検査です。それ以外の染色体異常や遺伝子異常、口唇口蓋裂、心臓病といった形態異常(形の変化を伴う異常)をNIPTで調べるのは、2023年現在まだ困難です。心疾患などの形態異常は、単一の遺伝子や染色体が原因とは考えられていないため、今後医療が発展してもNIPTで見つけられるようにはならないでしょう。形態異常については、そのほとんどを胎児ドックで見つけることが可能です。トリソミーについても、特徴的な形態異常を認めることが多いため、NIPTを受けなくてもその多くを胎児ドックで見つけることができます。評価し、その結果を踏まえて絨毛検査や羊水検査の必要性を相談するのがよいでしょう。

精度

NIPTの陰性的中率は99%以上(21・18・13トリソミー)であり、偽陰性は少ない検査と言えます。ただし、100%の精度ではありません。

妊婦健診で異常を指摘されていないから安心?

妊婦健診のエコー検査では、赤ちゃんの心拍や発育(大きさ)・羊水・胎盤等を評価しています。生まれつきの疾患・症候群の評価を目的としておらず、妊婦健診で異常を指摘されていない=病気がないということではありません。
そのため、赤ちゃんの健康状態について知りたい時には、出生前検査を考えます。

NIPTと胎児ドック/コンバインドテストの違い

1.トリソミー以外について

NIPTでは、トリソミー以外の形態異常についてわかりません。

トリソミー以外のことも知りたい場合には、形態評価する胎児ドックを受けることをおすすめします。ただし、トリソミー、特に21トリソミー(ダウン症候群)は、胎児ドックだろ感度が低いため、コンバインドテストまたはNIPTをあわせて実施するのが良いでしょう。

2.トリソミーについて

調べ方

NIPTは、DNA断片(染色体が断片化したもの)の量を調べます。検査対象である、21番・18番・13番染色が2本分に相当する量であれば陰性、3本分に相当する量であれば陽性の判定となります。

一方、胎児ドックやコンバインドテストでは、トリソミーに関連する疾患や特徴が起こっていないかを評価します。当院では、胎児ドックは10項目、コンバインドテストでは12項目のトリソミーの関連所見を評価します。エコー検査やホルモン値で気になる所見がなければ、原因となるトリソミーも起こっていないだろうと考えるのが胎児ドックやコンバインドテストです。

精度

精度にはいくつか見方がありますが、感度*(疾患のある児の何%に気付けるか)という見方で比較をします。

ダウン症候群の感度は、NIPTが99%(ダウン症のある児の99%に気付ける)、胎児ドックが80%*、コンバインドテストが97%*です。

感度は、疾患ごとで異なります。また、胎児ドックやコンバインドテストの感度は、評価項目が少ないほど感度は下がります。NIPT検査会社でも若干異なります。

*当院の胎児ドック/コンバインドテストの感度

NIPTと胎児ドックの違い

※このテーブルは横にスクロール出来ます。

  NIPT 胎児ドック 胎児ドック+コンバインドテストPLUS
検査方法 採血 エコー検査 エコー検査+採血
実施時期 妊娠10週頃~ 妊娠11~13週
※当院では詳細な形態評価を行うため、妊娠12~13週としています
結果返却にかかる時間 1週間程度 当日 当日~1週間程度
※当日では院内で血液検査の解析を行うため、同日に結果を返却できます
対象疾患 21・18・13トリソミー 21・18・13トリソミー+形態異常  
精度(感度) 99%程度 80% 97%
結果の出方 陰性か陽性 確率
※分数で算出されます

胎児ドック

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