ダウン症候群

ダウン症候群とは

ダウン症候群とはダウン症候群は、ダウン症と通称されることもある染色体異常による生まれつきの症候群のひとつです。染色体異常とは、通常2つで1ペアとなっている染色体の連なりの何番目かが1つ増えて3つになったり(トリソミー)、1つ減って1つになったり(モノソミー)、染色体の量や形が変化している状態を指します。
ダウン症候群は、21番目の染色体の量が3本分になることで2起こります。その他にも何種類かの型があり、とくに多いのは標準型です。いずれの場合も発育・発達が遅いことが特徴で、中には心臓など循環器系、消化器系の疾患や、甲状腺機能の低下、眼や耳の発達障害などの合併症が発症することがあります。

ダウン症候群の種類

標準型

何らかの原因によって22対44本のヒト常染色体の21番目のペアが1本増えて3本になった状態で、ダウン症候群のほとんどはこの型になります。

転座型

21番染色体の一部が何らかの事情で切断され、13~15番や21~22番染色体にくっついた状態で、これを転座と言います。ダウン症全体の5%程度がこの型になります。

モザイク型

受精卵が分裂して成長していく過程で、22対44本の常染色体をもつ正常な細胞と、21トリソミーとなっている22対45本の常染色体をもつ細胞が混ざりあう状態にになります。正常な細胞とトリソミーの細胞の割合は、ひとにより異なり、正常な細胞の割合が多いほど軽症となります。

ダウン症候群の特徴(症状)

ダウン症候群の赤ちゃんは、筋肉が弛緩する特徴があるため、全体的に身体に力が入らず「ぐにゃっ」としていることが特徴的です。また感覚器の発達も遅れるため、外的刺激にあまり反応せず、あまり泣き声を上げないことも挙げられます。
外形上も、頭が小さく顔が扁平で眼がつり上がっており鼻が低いといった傾向があり、また舌が大きい、表情筋の発達も遅れて口が開いているなどの場合もあります。その他にも、小さく丸い耳が顔の下の方についている首の後ろの皮膚が余っているなど、様々な特徴があらわれることがあります。
ほとんどのお子さんは2歳ぐらいまでに手をつなげば歩行が可能になります。運動能力や精神面ではどうしても発達の遅れが避けられない反面、大学を卒業したり、芸術面で優れた力を発揮したりしている人もあり、発育が遅れることに関しても個人差があります。

ダウン症候群と合併症

ダウン症候群には多くの合併症の可能性がありますが、合併症がほとんどあらわれないようなケースから、出産直後に手術が必要になるようなケースまで、かなり個人差が見られます。
中でも心疾患はダウン症候群の4~5割程度に見られるほど発症数の多い合併症です。心疾患では、心室中隔欠損、心内膜欠損、動脈管開存などが高頻度です。
続いて、消化器の異常で特に食道閉塞、十二指腸閉塞、鎖肛といった食道や腸の異常が多く見られ、特に十二指腸閉塞については2割から4割程度にあらわれることが知られています。

循環器の疾患
(心室中隔欠損・心房中隔欠損など)

心室中隔欠損症

心臓の左心室と右心室を隔てる心室中隔という壁の一部、または全部が生まれつき欠損していることがあります。これを心室中隔欠損症と言います。呼吸困難やチアノーゼ、疲れやすいといった症状があります。
この疾患は、全出生児の0.3%程度の確率で発症すると言われていますが、特にダウン症候群などの染色体異常では発症確率が高くなります。
穴は小さいものから大きいものまで様々ですが、小さい欠損の場合は自然に塞がることもあり、症状の軽重によって、経過観察から投薬治療など手術を行わない治療となります。
一方、欠損が大きく症状も重篤である場合は、生後すぐに手術を行うこともあり、また緊急性が高くない場合は内服治療を行いながら2~3歳まで成長を待って手術を行うこともあります。

心房中隔欠損症

心臓の左右の心房を隔てる心房中隔は、胎児のうちは誰でも穴が空いていて、出生とともにだんだんこの穴が閉じていくのですが、何らかの理由でこの穴が成長後も閉じないために起こるのが心房中隔欠損症です。この疾患は心室中隔欠損症など、他の先天的心臓疾患と比べて症状が出にくい傾向があり、成人するまで発見されないケースもあります。症状としては、動悸・息切れなどがありますが、一般的に幼少時は症状がほとんどあらわれないこともあります。
症状が強い場合、また検査などで発見された欠損が8mmを越えるケースなどでは、カテーテルや手術など外科的治療を検討することもあります。

消化器系の疾患
(十二指腸閉鎖・食道閉鎖など)

消化管とは、口腔から始まり食道、胃、十二指腸、小腸、大腸と連なり肛門にいたるまでの、食物の消化と排泄にかかわる身体の器官ですが、ダウン症候群によって、これらのどこかが閉塞してしまうことがあります。胎児エコー検査では小腸の閉塞は確認しやすいのですが、食道や直腸、肛門などの閉塞はなかなか確認できないこともあります。

十二指腸閉鎖

ダウン症候群による消化管の合併症でも多くあらわれるものが十二指腸閉塞です。完全に詰まってしまっている閉塞と、十二指腸管が狭くなっていても多少隙間のある狭窄があります。先天的な閉塞によって、生まれて24時間以内に胆汁の混じった黄色い液の嘔吐があります。治療としては、胃管を挿入して消化管の圧力を下げ、点滴によって水分や電解質を与え体調を整え、できるだけ早めに閉塞部分の切除やバイパスを構築するなどの手術を行います。

食道閉鎖

食道が気管と分離するあたりで途切れてしまっている状態が食道閉鎖です。
妊娠中に胎児が羊水を飲み込むことができないため、羊水過多となって気づくことがあります。また出生後は唾液の嘔吐、母乳を飲めないなどの症状で気づくことも多くなっています。
いくつかのタイプに分けられますが、飲み込んだものが肺に誤嚥されやすいタイプでは重篤な肺炎を起こしやすいため、できるだけ早く途切れている食道を繋ぐ手術を行うことが望ましい疾患です。しかし、心臓疾患など他の合併症と併存することが多く、すぐに手術のできない場合は、胃にチューブを入れ栄養補給をしながら、成長を待って手術を行うこともあります。

代謝・内分泌系の疾患
(糖尿病、高脂血症など)

糖尿病

ダウン症候群の場合、自己免疫によってインスリンの分泌ができなくなるⅠ型糖尿病の発症確率が通常の45倍になると言われています。また、ダウン症候群では筋肉量が少なく基礎代謝が少ないことと、そのために運動量が低下しがちであることから肥満を起こしやすいと言われています。そのためⅡ型糖尿病の発症も多くなることが知られています。
Ⅰ型糖尿病では、インスリンの注射による治療が必須のものとなります。

脂質異常症

基礎代謝が少なく、運動不足に陥りやすいダウン症候群では、高脂血状態の脂質異常症を起こしやすいことが知られています。乳幼児期から中性脂肪値が高い傾向にありますが、血管性疾患とダウン症の関連については、現在のところはっきりとしていません。そのため定期的に血液検査を行いながら経過観察となります。

甲状腺疾患

ダウン症候群では甲状腺機能の低下が多く見られます。甲状腺の機能が低下していると、活力がなくなり、低体温や便秘などの症状がおこります。また体重も増加しやすくなります。甲状腺ホルモンの不足を補う薬などの内服治療を行います。

眼科系の疾患
(斜視・白内障など)

斜視

通常は左右の視線が同一の方向を向いているものが、左右の視線が同一にならない状態が恒常的に続くのが斜視で視線の状態によっていくつかのパターンがあります。ダウン症候群では斜視の発症率が約3割と言われており、中でも内斜視が多く発症します。眼鏡やコンタクトで修整できる場合もありますが、必要な場合は手術も検討します。

白内障

出生時から水晶体が白濁しているのが先天性白内障です。ダウン症候群では、先天性白内障の罹患率が通常より10倍多いと言われています。先天性白内障の場合、視る力が成長しにくいため、強度の弱視となる可能性が高く、重症度によっては早急な手術が必要になる場合もあります。一方、軽症の場合はアイマスクなどによる視力強化で治療を行うこともあります。

耳鼻科の疾患
(難聴・滲出性中耳炎など)

難聴

ダウン症候群では、耳小骨などが奇形となるなど先天的な原因によって難聴が発症することもありますが、後述するように、ダウン症児は滲出性中耳炎を起こしやすく、そのため後天的な難聴となることもあります。
薬物や手術などによる治療を行いますが、様子を見て補聴器を使用することもあります。一般的に予後は良いのですが、長期的に経過観察していくことが大切です。

滲出性中耳炎

中耳に内部からの血液や組織液などの滲出液が溜まって炎症を起こしている状態です。大きな音であれば聞こえることや、急性中耳炎のように、激しい痛みや発熱がないことも合わせて発見が遅れることが多く、重症化しやすい疾患です。長引くと難聴になることや、聞こえない状態が続くことで言語の発達が遅れるケースもあります。
薬物療法、鼓膜切除方、チューブ留置などで滲出液を排出する治療を行います。

整形・骨格系の疾患
(低身長・偏平足など)

低身長

ダウン症候群は発育が遅いという特徴があり、出生時にすでに小さく産まれるケースもあります。また出生後も通常よりゆっくりしたペースで成長するため、成長曲線が一般より低くなるケースがあります。その上甲状腺ホルモンや成長ホルモンの異常、心疾患、消化器閉塞などの各種合併症によって十分に成長ができないケースも見られるため、状況に応じてホルモン治療などを行うことを考慮します。

扁平足

扁平足とは足の裏の土ふまずの部分のへこみが無く、扁平な状態を指します。ダウン症候群では、筋肉の弛緩などが原因となって、通常乳幼児期に形成される土ふまずが形成されず扁平足になるケースが多く見られます。土ふまずはバランスをとったり、踏ん張ったりするために重要な働きをしているため、専用のソールを靴に入れて矯正していきます。

血液系の疾患
(白血病・鉄欠乏性貧血など)

白血病

ダウン症候群でトリソミーが起こる21番染色体は免疫にかかわる特殊な抗体の生成に関係することが分かっています。この抗体が過剰になることで急性白血病の可能性は通常より10~20倍高いとされています。
検査の結果、白血病の罹患が判明した場合は、専門の医療機関を紹介しており、スムーズに治療を受けることができるようにしております。

鉄欠乏性貧血

ダウン症候群では、他の合併症による栄養不良などから鉄欠乏性貧血などが合併する例が見られます。定期的な血液検査で経過観察しながら、薬物療法で対応します。

神経系の疾患
(てんかん、発達障害など)

てんかん

ダウン症候群によるてんかんの発症率は5~10%とそれほど高くはありません。幼児期に起こるてんかんとしては、点頭てんかん(ウエスト症候群とも言います)が多く、このタイプのてんかんは数秒間隔で繰り返し全身の筋肉が収縮するもので、放置すれば精神面の発達に影響を及ぼすことが知られています。脳波や血液検査、その他脳の画像検査などで詳細を確認します。治療としては、副腎皮質刺激ホルモン治療を行います。

発達障害

ダウン症候群では自閉スペクトラム症などの発達障害の可能性が一般より高いと言われていますが、その原因は現在のところはっきりとしていません。ただしダウン症候群による脳の発育の遅延と何らかの関係があるのではないかと考えられています。様様な教育や環境の整備などによって対応していきます。

泌尿器系の疾患
(停留精巣、尿道下裂など)

尿道下裂

ダウン症候群の男児の場合、尿道口が陰茎の先端ではなく根元側に開いてしまう状態である尿道下裂が起こりやすいことがわかっています。この状態では便器に正常に排尿できず飛び散ってしまうことが多く、時には立って排尿ができないこともあります。
治療としては1~2歳の間に手術を行います。

停留精巣

通常男子の精巣は陰嚢内部に位置しますが、停留精巣では陰嚢内部に入らず胎内に精巣が留まった状態になっています。数か月で自然に精巣が陰嚢内部に移動することもありますが、経過観察を行い、2~3歳まで停留状態が続く場合はホルモン治療や手術治療を検討します。

ダウン症候群は
いつ・どの検査で分かる?

当院の胎児ドックでは、心奇形などの形態異常に加えて、形態でわかる「トリソミーらしさ」も評価しています。
妊娠12週〜13週6日(胎児の頭〜お尻までの大きさ:84mm以下)の場合で、ご希望があれば、ダウン症候群(21トリソミー)18トリソミー13トリソミーそれぞれついて、可能性を確率(◯分の1という分数)でお伝えすることができます。結果は当日返却いたします。
トリソミーの原因である染色体量を調べるNIPT(通称、新型出生前検査)や絨毛・羊水検査と異なり、エコーを用いて胎児を観察することで、トリソミーに関連する所見の有無を調べます。トリソミーに関連する所見としてはNT(首のむくみ)が有名ですが、その他にも鼻骨・静脈管・心臓の弁・臍帯ヘルニア・横隔膜ヘルニア・膀胱拡大・単一臍帯動脈・指の本数などを確認します。これらの特徴の一部は、妊娠初期にしか認めないため、13週6日までに胎児ドックで形態的なトリソミーらしさを評価することで、トリソミーのある胎児の約80%*に気付けるとされます。
妊娠14週以降は、トリソミーがあっても徐々に特徴が消えていくため、胎児ドックでの確率計算ができません。妊娠14週以降でも、胎児ドックで所見を認めることもありますのでエコー検査は有用です。エコーで異常を認めなかった場合には、クアトロテスト®︎やNIPT検査に関するご相談も可能ですので、まずはご連絡ください。

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妊娠15週0日〜妊娠21週6日

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ダウン症候群と寿命

ダウン症候群は、他の染色体異常と比べて症状が軽いことが多く、また合併症があっても、近年の医療の進歩によって克服でき、予後も良好なことが多くなっています。
ダウン症候群が定義された当初は成長することができない可能性が高いとされていました。
これは、当時の医療水準では治療が難しかったため、乳幼児死亡率が高かったことが理由として考えられます。
しかし、近年の統計では、平均余命は60歳以上で中には80歳代でも元気に活動している方もいます。

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