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2022.12.06

認定遺伝カウンセラーが教える羊水検査のキホン


認定遺伝カウンセラーが教える羊水検査のキホン

赤ちゃんの遺伝子や染色体の情報正確に確かめるための方法には、絨毛検査・羊水検査・臍帯採血の3つがあります。この中でも、“羊水検査”は聞いたことのある方が多いのではないでしょうか。

羊水検査のキホンに加え、よくいただくご質問をご紹介します。

羊水ってなに?

羊水の主な成分は、赤ちゃんのおしっこです。

羊水のなかには、赤ちゃんの細胞が浮かんでいますので、この細胞を用いて検査をします。

どんなときに羊水検査をするの?

・赤ちゃんに気になるところを認めたとき(形の異常など)

・非確定検査で陽性であったとき(NIPT・クアトロテストなど)

・カップルのどちらかがに染色体異常を認めるとき

・カップルのどちらか/どちらにも遺伝子異常を認めるとき

・年齢が気になるとき など

実施できるタイミングは、妊娠16週以降です。

羊水検査でなにがわかるの?

大きく分けると、以下の3つを調べることができます。

1 染色体の数・大きな形の変化
2 染色体の細かな形の変化
3 遺伝子の変化

「わかることは全て知りたい」と思うかもしれませんが、ヒトの遺伝情報には無数の個人差があるため、状況に応じて、解析方法をご相談します。

また、羊水検査の限界点として、染色体や遺伝子を原因としない疾患についてはわかりません。

実際よくあるご相談2選

「羊水検査だけで、胎児ドックは受けなくてもいいですか?」

「羊水検査をしたいので妊娠16週以降に受診してもいいですか?」

年齢が心配、前回の妊娠で赤ちゃんに染色体異常を認めた、などの理由で羊水検査を検討される妊婦さんからこのようなご質問をいただくことがあります。

よくいただくこの2つのご質問にお答えします。

※NIPTやクアトロテスト等で結果が陽性で羊水検査をご検討されている場合には、この2つの回答への回答も変わってまいりますので、こちらのコラムをご覧ください。

 

羊水検査だけで、胎児ドックは受けなくてもいいですか?

当院では、大きく2つの理由により、羊水検査の前に胎児ドックを行っています。

 

 ・羊水検査ではわからない、形の異常をみる

 ・形の異常をみることで、羊水検査でどこまで調べるかを考える

 

羊水検査といっても、以下3つのように調べる範囲は広くあります。

 ①染色体の数・大きな形の変化

 ②染色体の細かな形の変化

 ③遺伝子の変化

 

羊水検査というと、一般的にはG-band法・G分染法といって上記①の変化を調べる検査を指すことが多いです。しかし、このG-band法・G分染法でわかる範囲は、生まれつきの症候群や疾患の25%です。残り75%はわかりません。

 

胎児ドックでは、染色体や遺伝子ではなく、実際の赤ちゃんをみます。そのため、羊水検査ではわからない臓器ごとの異常(心臓病や口唇・口蓋裂など)にも気づくことができ、安全な出産や赤ちゃんの治療に向けての準備にも繋がります。

 

また、赤ちゃんの体に異常を認める場合、ものによっては上記②や③を疑うことがあります。一般的な上記①を調べてもわからないため、このような場合には調べる範囲を相談します。

これは、私たち大人でも、怪我をしたり、病気を患った時には、起こっている症状をみてから必要な検査を決めるのと同じことです。

 

羊水検査には、「気づけない病気があること」や「調べる範囲(解析方法)にも種類があること」を知っておくとよいでしょう。

羊水検査をしたいので妊娠16週以降に受診してもいいですか?

今の妊娠週数によって、何週での受診が適切かが異なります。

もし、今の妊娠週数が14週台までであれば、16週を待たずに受診することも検討してみてください。なぜかというと、妊婦健診のエコー検査では赤ちゃんの全身を評価しないため、異常があるかどうかはわかりません。胎児ドックで赤ちゃんに形の異常を認める場合には、絨毛検査(詳しくはこちら)も選択肢に挙がります。

 

ダウン症候群などトリソミーについて調べたい場合は、エコーでの評価が可能な妊娠12〜13週台で一度受診することをおすすめします。情報を集めたうえで絨毛検査や羊水検査の選択肢を考えることができたり、妊婦さんによっては「羊水検査をしなくても、胎児ドックやコンバインドテストで安心できた」と羊水検査が不要になるケースもあるためです。

 

また、いま妊娠15週以降の方は、16週〜17週での受診で問題ございません。羊水検査は一般的に、妊娠17週台までに実施しますので、もし妊娠18週以降で羊水検査を検討している方は、すぐにご相談ください。

 

 

次回のコラムでは、羊水検査の具体的な方法、痛みや費用など、気になるポイントをお伝えします。

 

文責

認定遺伝カウンセラー/看護師 加藤ももこ


この記事を書いたのは

加藤ももこ

加藤ももこ

専門分野 臨床遺伝学(周産期、神経、小児、腫瘍)